Merenda di oggi

イタリアで美術史を学びながら10数年暮らした後、2017年6月日本に完全帰国。美術のことなどを中心に、日々思うちょっとしたことを思うがままに綴っています。

食堂かたつむり、小川糸

([お]5-1)食堂かたつむり (ポプラ文庫)
イタリアでバンカレッラ(bancarella)賞を受賞したと今頃になって知った。
そして春に見たドラマ

ツバキ文具店
2冊の作者が同じだと、全然気が付かなかった。
「バンカレッラ」とはイタリアで「露天」のこと。
バンカレッラ賞は1952年から続く伝統的なイタリアの本屋賞。
ちなみに第一回の受賞者はヘミングウェイの「老人と海
このバンカレッラ賞に2006年新しく加わった料理部門の本に対する賞を「食堂かたつむり」は2011年受賞した。イタリアでは受賞の前年”Il ristorante dell’amore ritrovato”というタイトルで出版された。「再び手に入れた愛の食堂」という意味。

読んでみて驚いた、いかにも日本的な独特の世界だ。
イタリアにはない食材や料理をどのように訳したんだろう…
空腹を満たすだけに食事をするのはやめよう。
何かもっと心が満たされる食事がしたい。

美しい日本語はまるで静かに流れる小川のようだ。
作者の独特な世界に魅了され、涙し、心が満腹になる。

★★★



ニュルンベルクのストーブ、ウィーダ

フランダースの犬 (岩波少年文庫)

フランダースの犬」に収録されている「ニュルンベルクのストーブ」が読みたくて。
フランダースの犬」の原作初めて読んだ。
ここまで可哀想なお話が子供むけって、どうなんだろう…号泣。

片や「ニュルンベルクのストーブ」も貧乏な男の子の話だが、こちらは最後はハッピーエンド。
なぜこの話を読んだかというと、当時の陶器のストーブの事が知りたかったから。
美術史という視点から見ても興味深いし、「偽物はダメ!!」という作者の強いメッセージも盛り込んだ面白い作品だった。

しかしこれも泣けるのだ。

エクストラバージンの嘘と真実

エキストラバージンの嘘と真実 スキャンダルにまみれたオリーブオイルの世界
オリーブオイルがちょっとブームになっているが、これを読んだら自分が口にしているものが本当に「エクストラバージン」なのか疑いたくなる。
日本のスーパーで売られているようなものにまず「エクストラバージン」はないだろう。いや、イタリアのスーパーとて似たような状況だ。
汚職と偽造にまみれた世界のオリーブオイル業界を赤裸々に批判した一冊。
しかし、これだけでは変われないよな。

 

★☆☆

窓ぎわのトットちゃん、黒柳徹子

窓ぎわのトットちゃん (1981年)
テレビの影響で何年ぶりだろ、読み返してみた。
こういう自由な小学校が有れば、もっと生きやすくなるのでは?

ドラマはドラマ。
かなり脚色されているのが分かった…
★★☆

たゆたえども沈まず 原田マハ

たゆたえども沈まず


1886年、栄華を極めたパリの美術界に、流暢なフランス語で浮世絵を売りさばく一人の日本人がいた。彼の名は、林忠正
 その頃、売れない画家のフィンセント・ファン・ゴッホは、放浪の末、パリにいえる画商の弟テオドルスの家に転がり込んでいた。兄の才能を信じ献身的に支え続けるテオ。

 そんな二人の前に忠正が現れ、大きく運命が動き出すー。」(帯より)

登場人物はほぼ実在した人たち。でも彼らにどのような接点が有ったのかは分からない。ただあれだけ浮世絵、日本に恋い焦がれた兄弟と当時パリにいた数少ない日本人の林の間にはもしかしたらこんなストーリーが有ったかもしれない。

才能が有りながらも、それを認めていたのは弟のテオだけ。才能が認められ、ゴッホの作品が日本へ行くことを夢見ていた二人は、今こうしてゴッホの作品に非常に価値が出たことをどう思っているのだろうか?

原田マハの書くアートを扱った作品の中ではちょっと失速しているかなぁ、という感じだが、日本人がこんな風にゴッホ兄弟と過ごしていたなら良いなぁと思わせる作品だった。


★★☆

カラヴァッジョの秘密

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27日発売してすぐ読んだ。
なぜなら昨日イタリア文化会館で、作者の講演会があったから。

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「もし、この本が、カラヴァッジョに関する世間を騒がせるような新事実の暴露、あるいは、確たる証拠もないのに1つの作品をめぐって何十年も真筆論争を続ける研究者集団と競争するのが目的ならば、おそらく、ここに書くことはそれほどないだろう。私はこの本をまったく別の理由で書いた。カラヴァッジョを愛し、まるで彼を昔から知っている人かのように理解したいと思う人たちのための手引き書としてである。美術史の教本や学術書で頭痛を起こすことなく、また、複雑に絡む引用文にこんらんすることもなく読めるものである。」
と作者が前書きで言っている通り、専門書ではなく、日本では欧米に比べてまだまだ知名度がそれほど高くないカラヴァッジョを広く広めるには良い本だと思う。

翻訳本だからか、枚数の割にはちょっとお高いのが問題だが。
★★☆