Merenda di oggi

イタリアで美術史を学びながら10数年暮らした後、2017年6月日本に完全帰国。美術のことなどを中心に、日々思うちょっとしたことを思うがままに綴っています。

デトロイト美術館の奇跡、原田マハ

デトロイト美術館の奇跡
セザンヌつながりで思い出した原田マハの「デトロイト美術館の奇跡」

2013年財政破綻したデトロイト
デトロイトの街は、1950年代ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モータークライスラーの3大自動車メーカーを擁し、圧倒的な輝きを放っていた。まさにアメリカ製造業の“心臓部”だった。
しかし、1970年代に起こった石油ショック、燃料の持ちがよく小型の日本車の台頭に加え、「最強の労組」の異名を持つ全米自動車労組のせいで、人件費もかさみ、業界のデトロイト離れが加速。
2007年に発生した金融危機で、クライスラーとGMが相次いで破綻。税収の激減などで、市は2013年7月に財政破綻した。

市が財政再建のために考えたのは、美術館の絵画売却。
米競売商クリスティーズも査定に乗り出す事態となった。

1885年に開館した、アメリカでも3番目に大きな美術館の、デトロイト美術館は古代エジプト美術から現代美術まで65,000以上の芸術品を所蔵。
アメリカ出身の芸術家の作品も多いが、バビロンのイシュタルの門、ピーテル・ブリューゲルの"The Wedding Dance"、フィンセント・ファン・ゴッホの自画像、ハンス・ホルバインの女性の肖像画ディエゴ・リベラフレスコ画ジョヴァンニ・ベリーニの聖母子画、ウィリアム・アドルフ・ブグローの"The Nut Gatherers"などもある。
これらを売りさばいてしまえば…

しかし市民や各地の美術団体が猛反発。
市側は結局、市職員らの年金削減などで負債を削減する再建計画を提出し、名画流出の危機は回避された。

実際に起こったデトロイトの破綻と美術品を守るべく動いた市民の行動をベースにしたのがこの「デトロイト美術館の奇跡」
中心となるのは、同美術館が所有するセザンヌが描いた”夫人像”
絵画に対する様々な人物の気持ちが胸を熱くする作品だった。
★★★

なお、セザンヌの”夫人像”についてさらに知りたい場合はこちらもおすすめ。

いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画 (集英社新書)