Merenda di oggi

イタリアで美術史を学びながら10数年暮らした後、2017年6月日本に完全帰国。美術のことなどを中心に、日々思うちょっとしたことを思うがままに綴っています。

セザンヌと過ごした時間

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昨日この映画を観た。
セザンヌとゾラの物語。

この映画を観るまで、「近代絵画の父」とも呼ばれているセザンヌがこんなにもやんちゃで(嫌な男なんだなぁ…)不遇だったことを知らなかった。
少年時代、転校生でいじめられていたゾラをセザンヌが助けたことから始まる友情が、ゾラの成功、画家として全く目が出ないセザンヌの関係をぎくしゃくさせる。
しかしゾラは仕送りを減らされたセザンヌの家に金銭的援助をしたりと陰でセザンヌを支えていたのだが、ゾラが書いたある芸術家をモデルにした作品(『制作』)が原因で、2人は決別してしまう。

制作 (上) (岩波文庫)
それ以降二人は2度と会うことはなかったと思われていたが、2014年、セザンヌがゾラに送った手紙が発見され、サザビーズのオークションにかけられた。
手紙の日付は、二人が仲違いしたとされる最後の手紙、1886年4月4日から1年以上経過した1887年11月28日
そこには「君がパリに帰ってきたら、会いに行くよ」と綴られていた。

この手紙の発見は、長年リサーチを重ねたことで小説『制作』をきっかけに絶交したとされてきた二人は実は再会していたと信じていた監督の思いを確信に変えた。
しかし映画では、“再会”は果たせず。
セザンヌはゾラに会いに行くのだが、思いは伝わらず、寂しいエンディングを迎える。

セザンヌが画家として真の高い評価を得られるのは、ゴッホ同様、死後のこと。
ピカソに「我々の父」、マティスに「絵の神様」と言われたセザンヌなのに…
タンギー爺さんの店で奇しくも売れ残っていたセザンヌの絵を見たゴーギャンゴッホはその絵から多大な影響をうける。
★★