Merenda di oggi

イタリアで美術史を学びながら10数年暮らした後、2017年6月日本に完全帰国。美術のことなどを中心に、日々思うちょっとしたことを思うがままに綴っています。

葛飾北斎の本懐

葛飾北斎の本懐 (角川選書)
先日NHKでやっていた「眩(くらら)~北斎の娘~」

これを見て北斎の事が気になったので読んでみた。
( 2017年10月7日(土) 午後4時45分から 総合 で再放送)

今でこそ日本でも北斎は大人気だが、その評価は最近までかなり低いものだった。
むしろ北斎の評価は逆輸入。海外で認められ、改めて日本へ。

1980年まで重要文化財に指定されていた浮世絵師の中に北斎の名前はなかったのだ。
北斎より活動期が遅かった歌川広重でさえ重要文化財に指定されていたのに…
北斎の作品が初めて重要文化財に指定されたのは実に1997年のことだった。
そして2016年ですら3点しか重要文化財には登録されていない。

しかしこんな北斎評価が大きく変わるのは、1998年アメリカの写真誌『LIFE』が行ったこの1000年間、世界で「大きな業績を残した人物1000年」に日本人で唯一北斎が19世紀唯一の画家として選ばれたからだ。

着古して穴の開いた服を着て、部屋は掃除もせず、とにかく絵を描く以外のことには無頓着。
ドラマでも北斎はそんなイメージで演じられていた。
このイメージは日本初の北斎研究書にして、北斎研究者の必読書である『葛飾北斎伝』によるものが大きい。1893年に飯島虚心によって書かれた2冊からなること本は、現在のような”美術史的な、歴史学の一分野としての論証法”で書かれているわけではなく、虚心が北斎と関係があった人から聞き取ったことを中心に書かれているので、信憑性は決してたかいものではないのである。
それでも資料が多くないため、この本に書かれた北斎像を採用するしかないのが現状である。

浮世絵以外の北斎の作品の紹介など、著者も言っているが、枚数不足が残念だ。
★★☆